平成30年6月1日から、被疑者国選弁護人の対象事件が拡大されました。
被疑者国選弁護人とは、逮捕された後、引き続き起訴か不起訴かが決まるまで勾留されることが決まった段階で、財産や収入がないなどの理由で弁護人を付けられない人に対し、国の費用によって選任される弁護人です。
今までは、死刑、無期又は長期3年を超える懲役又は禁錮に当たる犯罪につき勾留されている被疑者について国選弁護人を付すことしかできませんでしたが、平成30年6月1日以降に勾留されている事件からは、全ての種類の犯罪で国選弁護人を付すことが可能となりました。
この法改正は、平成28年の通常国会で刑事訴訟法の一部を改正する法律として成立し、司法取引などといった、刑事司法に関する新しい制度と共に、平成30年6月1日に施行されたものです。
他の制度も含め、裁判所や法テラス(被疑者国選弁護人の名簿作成、報酬支払等の事務を実際に行うのは法テラスの通称で知られる日本司法支援センターです。)などの関係機関の準備が必要だったので改正法の公布後施行までに2年間の期間が置かれたものと思われます。
何はともあれ被疑者国選弁護人の対象が拡大されましたので、逮捕勾留されたのに弁護人を付けたくても付けられない、という人を無くすことができました。
刑事司法における被疑者・被告人の権利保障において、先進国の後塵を拝しているといわれる日本ですが、今回の被疑者国選弁護人の対象拡大により大きな進歩があったということができます。
もちろん、国選弁護人の対象事件であっても、私選弁護人を付けることは可能ですし、私選弁護人には、国選弁護人と比較した際にメリットがある点もあります。
不幸にも罪を犯してしまった人にも、弁護人選任権として国選弁護人制度が拡充され、さらに様々な選択肢として私選弁護人も選ぶことができる、というのが理想の状態であると思います。
我々もそういった選択肢の一つとなるよう、そして選んでいただけるよう、研鑽していきたいと思います。