逮捕・勾留された場合、あなたの味方になってくれるのは弁護士です。
刑事事件においては、基本的に弁護士が必要になってきます。
なぜなら、法律の知識のない状態で、警察や検察官、相手側の弁護士を相手に刑事手続きを行うことはあなたの不利となり得るからです。
またそのような不利を避けるために、必要的弁護事件(死刑、無期、長期3年を超える懲役又は禁錮にあたる事件)では必ず弁護士を付けないといけないという決まりもあります。
そして、弁護士は「国選弁護士」と「私選弁護士」に分けられます。
国選弁護士は費用がかからない反面、弁護士を自分で選ぶことが出来ないので、どのような弁護士が付くのか完全に運任せになります。
逆に、私選弁護士は自分に合った弁護士を選ぶことができますが、弁護士費用が必要になるなど、一長一短です。
とはいえ、刑事事件というのは、結果によってあなたの人生を大きく左右するものです。
出来る限り、刑事事件に強い弁護士に弁護をしてもらったほうが安心ですよね。
本記事では、
を分かりやすく説明していきます。
国選弁護士と私選弁護士の違い
それでは早速、国選弁護士と私選弁護士について説明していきます。
詳しくは読み進めてもらえればわかるのですが、簡単に説明すると、国選弁護士は貧困などの理由で弁護士を付けれないときに、裁判所が国の費用で付ける弁護士のことです。
一方で、あなた自身で弁護士を探し、あなたが弁護士費用を支払って弁護を依頼した弁護士のことを私選弁護士といいます。
国選弁護士、私選弁護士ともに活動制限はなく、弁護人として出来ることは同じです。
国選弁護士とは
国選弁護士とは、被疑者・被告人が貧困などの理由で私選弁護士を選任することができないときに、国の費用で弁護士を付けることによって、被疑者・被告人の権利を守ろうとする制度です。
起訴後の被告人国選弁護と、起訴前の被疑者国選弁護の二本立ての制度になっています。
この制度によって就任する弁護士を、国選弁護士といいます。
私選弁護士とは
私選弁護士とは、被疑者・被告人またはその家族が自身で選ぶ弁護士のことです。
インターネットで探したり、自宅から近い弁護士事務所など、自由な条件のもと選ぶことができます。
昨今では、特定ジャンルの対応に特化した弁護士事務所(刑事弁護に強い弁護士など)も増えていますので、あなたの悩みに合わせた弁護士事務所を選ぶことが出来るでしょう。
国選弁護士と私選弁護士の違いまとめ
国選弁護人 | 私選弁護人 | |
---|---|---|
選任者 | 国(裁判所) | 被疑者・被告人(本人)本人の配偶者,兄弟姉妹,直系の親族,保佐人 |
選任方法 | 国選弁護人として法テラスに登録された弁護士の中から選任。 | 自由に選ぶことができる |
選任条件 | 貧困その他の事由により弁護人を選任できないとき。具体的には,資力(現金と預金の合計)が50万円に満たない場合など。 | 弁護士との自由な契約 |
選任時期 | 原則として起訴後。但し一定の犯罪のみに起訴前から可能 | 起訴前の捜査段階から可能 |
弁護人の権限 | 両者ともに同じ。 |
国選弁護士のメリット
国選弁護士は費用が無料
国選弁護人のメリットとしては、なんといっても無料で弁護活動をしてくれることです(ごくまれに判決時に裁判所から費用の償還を求められることがあります。)。
また、国選弁護人といっても弁護活動に制約があるわけではなく、できることは私選弁護人と変わりません。
ただし、誰でも平等に国選弁護士を付けることが出来るわけではなく、経済的に弁護士費用を支払えないために私選弁護士を付けることが出来ない場合や、凶悪な犯罪すぎてどの弁護士からも依頼を断られてしまうような場合にのみ、国選弁護士を付けることが出来ます。
国選弁護士のデメリット
選任されるタイミングが遅い
国選弁護士のデメリットとしては、①勾留されるまでは全ての事件で選任されないこと、②一定の事件を除いて起訴されてから選任されること、といった点があります。
そのため、身体拘束をされないいわゆる在宅の事件では国選弁護人は選任されませんし、3年以下の懲役が刑として定められている事件(例えば器物損壊など)では、起訴されるまでは国選弁護人は選任されません。
私たちはこのタイミングの選任では遅いと考えます。
警察・検察というのは、自分たちの有利なように供述書の作成を行いがちです。
一度そのように作られた調書を覆すことは優秀な弁護士でもってしても困難です。
したがって、起訴前の取り調べや供述に対して弁護士からアドバイスを受けるということは、その後の判決に大きな役割を持つのです。
このことは、日本における起訴後の有罪となる割合が99.8%と大変高い割合ということからも感じ取れると思います。
こちらの「当事務所への依頼のメリット」でも書いていますが、当事務所では、まずは被害者との示談や不起訴を目指します。
刑事事件に強い弁護士が選任されるとは限らない
国選弁護士は法テラスに国選弁護士として契約している弁護士の中から無作為に選任されます。
したがって、その弁護士は老若男女、得意分野も様々です。
必ずしも刑事弁護に長けた弁護士が付くとは限らないのです。
一度選任された国選弁護士は変更できない
そして、仮に選任された国選弁護士が刑事弁護に長けた弁護士ではなかった。
なんだか相性が合わないな。などと思っても、一度選任された国選弁護士を変更することはできません。
どんな弁護士であれ、一度選ばれた国選弁護士に全てを委ねるしかないのです。
ただし、弁護士費用を支払って私選弁護に変更するということは可能です。
私選弁護士のメリット
捜査段階の早い時期からの弁護活動が可能
国選弁護士の選任が原則起訴後であるのに対して、私選弁護士であれば逮捕、勾留される前から弁護活動を開始できるというメリットがあります。
捜査段階の早い時期から弁護活動を行うことで、逮捕や勾留を回避できる可能性もあります。
刑事事件はスピード勝負です。
一刻も早い弁護士の関与が必要となってきます。
刑事弁護の経験豊富な弁護士を選ぶことが出来る
弁護士が扱う法律事件というのは、実に様々な分野に渡ります。
扱う事件によって、必要な知識や法律は大きく変わります。
弁護士事務所によっては、ある特定の事件に特化した弁護士事務所もございます。
刑事事件の弁護であれば、ぜひ刑事弁護の経験豊富な弁護士へのご依頼をご検討ください。
合わなければ弁護士の変更が可能
私選弁護士の場合は、依頼した後に、「やっぱり相性が合わなかった」「熱意が感じられない」などの不満があった際は自由に弁護士の解任、変更が可能です。
また、セカンドオピニオン的に、複数名の弁護士に相談することも禁止されておりません。
私選選弁護士のデメリット
弁護士費用が必要
私選弁護士に弁護を依頼するとなると、その弁護士事務所の定める弁護士報酬が必要となります。
多くの弁護士事務所の刑事事件の相場は約60~80万円が多いと思います。
事件の内容によっても弁護士費用は変わってきますので、まずは問い合わせることをお勧めします。
なお、当事務所では相談料は無料、最大1年までの分割支払い可能など、ご依頼頂けやすいような費用体系を採用しております。
刑事事件では国選弁護士ではなく私選弁護士を選ぼう
ここまで国選弁護士と私選弁護士の違いやメリットデメリットを説明してきましたが、刑事事件においてはやはり私選弁護士を選ぶことをオススメします。
その理由が、刑事事件においては捜査段階の早い時期からの弁護活動がとても大切だからです。
日本における起訴後の有罪となる割合は99.8%と大変高い数値です。
しかし一方では、事件の起訴、不起訴の割合は不起訴が上回っています。
参考資料:法務省 犯罪白書 平成29年度版
これらの統計資料は、刑事事件においてはいかに不起訴に持ち込むことが大切なのかを物語っています。
国選弁護士は、一定の事件を除いて起訴されてから選任されます。
これでは遅いのです。
弁護士のサポートが最も必要なのは「起訴前」です。
起訴前の取り調べや供述に対して、有効なアドバイスを行えるのは私選弁護士なのです。
また、捜査段階の早い時期から弁護活動を行うことによって、逮捕・勾留自体を回避できる可能性もあります。
刑事事件はスピードが勝負です。
ぜひ、一刻も早い弁護士へのご相談をお勧めします。
国選弁護士についてよく聞かれる疑問
ここからは、主に国選弁護士についてよく聞かれる質問をご説明していきます。
国選弁護士の選ばれ方
国際弁護士に選ばれても構わないという弁護士は、法テラスにあらかじめ候補として名簿に登録されています。
その登録名簿の中から裁判所が国選弁護士を指名します。
登録弁護士の中には様々な弁護士が登録されています。
経験豊富な弁護士、若くやる気のある弁護士、中にはあまりやる気のない弁護士もいるかもしれません。
どの弁護士が選ばれるかは完全に運しだいとなります。
国選弁護士はどのタイミングでつく?
国選弁護士の場合、一定の重さの刑が定められている犯罪の場合は起訴前から、それ以外の事件では起訴後に選任されます。
起訴前に選任されるのは、必要的弁護事件(死刑、無期、長期3年を超える懲役又は禁錮にあたる事件)と呼ばれる重罪にあたる事件の場合です。
一方で私選弁護士の場合は、起訴前の逮捕や勾留段階から弁護活動を依頼することが出来ます。
国選弁護士の勝率は私選弁護士と比べて低い?
国選弁護士だから質が悪い、勝率が低いということはまずありません。
国選弁護士であろうと、私選弁護士であろうと、行える弁護活動は同じです。
あとは本人がどれだけ真剣に事件と向き合ってくれるかです。
ただし、弁護士といえども全ての事件に精通しているわけではありません。
私選弁護士の場合は、その事件の経験豊富な弁護士を探して指名することができますが、国選弁護士の場合はそのような指名はできません。
そういった意味では少し不利な気もしますね。
国選弁護士を付けるのを断ることはできる?
事件によっては弁護人が必須ではない事件もあります。
そのような場合は、弁護人を付けずに裁判に臨むことは可能です。
ただし、弁護人が必須ではない事件においても、裁判所が必要と判断した場合は国選弁護士を付けられることもあります。(刑事訴訟法37条5号)
国選弁護士は変更、解任できる?
国選弁護士が頼りなかったり、相性が合わなかった場合、他の国選弁護士に変更することは可能でしょうか。
答えはノーです。
残念ながら一度選任された国選弁護士は変更することができません。
また、解任についても、きちんとした解任事由がない限り認められません。
ただし、私選弁護士への変更というケースは認められますので、選任された国選弁護士に不満があれば、私選弁護士への切り替えをご検討ください。
国選弁護士でも費用が発生する場合がある?
国選弁護士でも費用が発生する場合はあります。
それが、執行猶予付きの判決を受けた場合です。
本来、国選弁護士は経済的な理由で付されます。
しかし、執行猶予付きの判決によって身柄が解放されて、その後何も問題なく社会復帰できるような場合は収入が見込めます。
このような場合は費用の負担を命じられることがあ
国選弁護士に対する報酬を含め証人の旅費や日当などの訴訟費用についての支払いを命じられる可能性があるということです。
国選弁護士に対する苦情はどこに言うべき?
国選弁護士としての登録や国選弁護士への報酬支払いなどは日本司法支援センター 法テラスが管理しています。
国選弁護士へ何らかの苦情がある場合は、まずはこちらへ相談してみましょう。
あなた以外にも同じような苦情がたくさんあり、その弁護士が国選弁護士として相応しくないなどを判断されれば、国選弁護士としての登録が外されるなどの処置があるかもしれません。
また、国選弁護士、私選弁護士に限らず、弁護士に対して不満がある場合は、弁護士会にその窓口がございます。
国選弁護士には手土産や謝礼は必要?
国選弁護士は規定により、手土産や謝礼の受け取りが禁止されています。
(国選弁護における対価受領等)
第四十九条
弁護士は、国選弁護人に選任された事件について、名目のいかんを問わず、被告人その他の関係者から報酬その他の対価を受領してはならない。引用:弁護士職務基本規程
国選弁護士への弁護士報酬は、国から支払われることとなっていますので安心してください。
どうしてもお気持ちを伝えたいということでしたら、お手紙やお電話で感謝の気持ちを伝えましょう。
最後に
私たちも国選弁護士として法テラスへ登録しております。
しかし、起訴後の選任の場合は、出来る弁護活動に限りがあります。
繰り返しになりますが、刑事事件はスピードが勝負です。
当事務所には国選弁護士に不満で、私選弁護士に切り替えたいという相談も多くございます。
些細なことでも構いませんので、お気軽に無料相談をご利用ください。