国選弁護人と私選弁護人の違いの一つとして、解任の場面での違いがあります。
刑事事件で弁護士をお探しの方の中には、親族が既に勾留されていて、国選弁護人がついているが、国選弁護人の活動に不安を感じて、解任の方法をお尋ねになる方がよくおられます。そういった方のために、まず解任の場面での国選弁護人の特色を書きたいと思います。
結論を言うと、国選弁護人の解任には、①裁判所に刑事訴訟法38条の3第1項2号ないし5号の事由があると認めてもらい解任の決定を出してもらう、②私選弁護人を選任する(刑事訴訟法38条の3第1項1号)、の2つの方法があります。
まず、刑事訴訟法38条の3第1項を見てもらうのが早いと思います。
第38条の3
1 裁判所は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、裁判所若しくは裁判長又は裁判官が付した弁護人を解任することができる。
(1)第30条の規定により弁護人が選任されたことその他の事由により弁護人を付する必要がなくなったとき。
(2)被告人と弁護人との利益が相反する状況にあり弁護人にその職務を継続させることが相当でないとき。
(3)心身の故障その他の事由により、弁護人が職務を行うことができず、又は職務を行うことが困難となったとき。
(4) 弁護人がその任務に著しく反したことによりその職務を継続させることが相当でないとき。
(5) 弁護人に対する暴行、脅迫その他の被告人の責めに帰すべき事由により弁護人にその職務を継続させることが相当でないとき。
方法①は、(2)から(3)の事由があって、解任の必要があることを裁判所に申し入れることになります。しかし、一度選任した国選弁護人を解任することには、被疑者・被告人の権利保護に支障をきたす恐れがあることから、裁判所は慎重であり、よほどのことがなければ認められません。
これに対し、方法②の方法は、私選弁護人が付けられたということであり、財産や収入がない人等のための制度である国選弁護人が重複して選任され続ける理由はありませんので、自動的に国選弁護人は解任されます。
そのため、国選弁護人を解任するには、②私選弁護人を選任する、という方法がとられることがほとんどです。
他方で私選弁護人を解任する場合は、自分の責任と費用で選んだ弁護人ですから、いつでも解任することができます。もちろん、自分で選んだ弁護人である以上は、しっかりとコミュニケーションを取って、弁護活動を継続してもらうように働きかけ、どうしてもこの弁護士では進めて行けない、ということになった時に、最悪の手段として解任する、という形を取るべきです。