はじめに
大阪などの都市部で満員の通勤電車に揺られて通勤している人にとって、痴漢というのは身近な犯罪です。大阪府警のホームページで公開されている犯罪統計情報でも、平成29年の痴漢(大阪府迷惑防止条例違反)の検挙件数は351件であり、大阪府下でほぼ毎日痴漢が起きている計算になります。
実際の痴漢事件も、普通に会社に通勤途中の男性が、出来心でたまたま近くにいた女性を触ってしまった、ということがほとんどです。
もちろん、痴漢は被害者に深い恐怖心を与え、後々まで残る心の傷を負わせる深刻な犯罪であり、出来心でやってしまって許されるような問題ではありません。
そうは言っても、痴漢で逮捕された人(あるいは釈放されたが警察に呼び出されて取り調べを受ける人)が、この先に取り調べや処分が待ち構えるという不安を感じるのもやむを得ないことです。そのような時に、頼りになるのは弁護士です。以下では弁護士に依頼するべき理由を書いていきます。
逮捕されたら
逮捕による身体拘束中に弁護士に依頼してアドバイスを受けることは重要です。
痴漢で逮捕された場合、警察署で取り調べを受け、1日、2日と留置場に入れられることがあります。逮捕後は、警察が、検察庁に事件を送致する(「送検」といいます。)までに48時間の身体拘束をすることができるからです。
痴漢が迷惑防止条例違反という罪の範囲である場合(服の上から触る普通の痴漢はここに当てはまります。)には、警察は送検する前に被疑者を釈放して、必要に応じて警察署に呼び出して取り調べを続ける形で捜査を継続する、という形をとることも多いです。逆に、痴漢が強制わいせつという罪に問われるような悪質な痴漢である場合(ケースバイケースですが下着の中に手を入れるといった場合はこちらに当てはまることがあります。)や、痴漢の事実関係を否認している場合などは、身体を拘束したまま送検し、検察官が24時間以内に裁判所に勾留請求を行って、その後も身体拘束を長期間続ける、という場合もあります。
逮捕後の留置されている期間は、家族であっても原則として面会をすることはできません。家族などが面会できるのは、勾留された後となります(痴漢の場合はまれでしょうが、勾留決定の際に裁判官が接見禁止処分を付している場合は、勾留後も面会できません。)。
弁護士であれば、逮捕後の留置されている期間も面会をすることができます(勾留後に接見禁止処分が付されている場合も面会できます)ので、お話を伺ってアドバイスをしたり、ご家族への伝言を聞いたりすることができます。
そのため、例えばご家族が痴漢で逮捕されて、今夜は帰ってこないと警察から連絡があった場合は、弁護士に依頼して面会してもらい、事情を把握し、不安を解消することをお勧めします。
こちらの記事も参照 痴漢の罪名
処分を軽くするには
以上で述べたのは身体の拘束された場合の初動の対応とは別に、痴漢の場合、弁護士を依頼して被害者の方と示談をする、ということが広く行われています。身体拘束されている場合はもちろん、身体拘束がなかった(または既に釈放された)場合にも、起訴されるのを防ぎ、処分を適正な範囲で軽くすることには、痴漢された被害者の方との示談が欠かせません。
また、示談の効用には、被害者の方の被害回復(謝罪や金銭支払いによる慰謝、加害者に接近しないように誓約させることに留まりますが。)があります。示談がなされない場合には、痴漢の加害者は前科や反省の態度などが考慮され、刑罰を科すべきとなった場合には数十万円の罰金刑や執行猶予付きの懲役判決といった処分を受けます。しかし、痴漢の被害者の方には何の金銭的賠償もなされませんし、加害者に対して被害者の方に接近しないよう約束させることもできません。刑罰はその性質上、被害者のケアをするためではなく、治安維持のための加害者の責任追及と再犯予防のためにあるので、やむを得ないのですが、被害者の方にとっては酷な話であろうと思います。痴漢の被害を受けた方のためにも、示談をする有用性はあるのです。
このように、被害回復という効用のある示談ですので、痴漢事件において示談がなされると、そのことが検察官に考慮され、不起訴となるか、あるいは比較的軽い処分が下されることとなります。
しかし、被害者の方は、痴漢した方に恐怖心を抱いていますから、痴漢した方やその関係者が示談のためとはいえ直接接触することはできないのが通常です。
そこで、弁護士に依頼して、弁護士を通じて痴漢の被害をうけた方と交渉し、示談の成立を目指すことが必要になります。
こちらの記事も参照:痴漢と示談
痴漢で逮捕または警察に呼ばれる場合は弁護士へ依頼を
このように、痴漢で逮捕されたり、警察に呼ばれて取り調べを受けたりする場合には、弁護士に依頼することが欠かせません。
勾留された場合には、国選弁護人が付きますが、釈放されたり、最初から身体拘束を受けなかったりという場合は、自分で、あるいはご家族で、弁護士を探して依頼する必要があります。
そのような際には、まずはご相談頂ければと思います。