正当防衛という言葉を耳にしたことがある方も多いと思います。
しかし、単に防衛するために殴り返した等では正当防衛が成立しないことも多くあります。
したがって、自身の行為が正当防衛となるのかどうかを知っておく必要があります。
正当防衛とは
急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
として、刑法は正当防衛を定めています。
この中で重要なものは、急迫不正の侵害というものと、やむを得ずにした行為、というものです。
例えば、殴られたもののその場は収まったにもかかわらず、相手を追いかけて殴った場合には、急迫不正の侵害はないと判断されて正当防衛は成立しないことになります。
また、一発殴られたことに対して、何回も殴り返す、凶器を使用するなどした場合は、やむを得ずにした行為ではないと判断され、正当防衛は成立しないことになります。
正当防衛が成立しない場合
例えば、相手方が殴り込みにくると分かっていながら、その機会を利用して対抗すること、自身から挑発して相手方が攻撃してきたことを利用して反撃する場合には正当防衛は成立しません。
また、空手の有段者が素人に対して回し蹴りすることは、相手方が凶器をもっている場合は別として、行き過ぎた手段として正当防衛は成立しません。
過剰防衛とは
刑法では、防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減刑し、又は免除することができる、と定められています。
いわゆる過剰防衛です。
この過剰防衛と判断される場合には、刑を軽減し、免除できるとされている一方、必ずしも減刑や免除されるわけではないことに注意が必要です。
また、過剰防衛は急迫不正の侵害があった場合には、動転して多少の行き過ぎた攻撃が行われることはやむを得ないという規定ですので、自身で挑発して殴りかかられたことに対して殴り返すという場合には、適用されない可能性があります。
最後に
最終的に正当防衛と判断されるか否かは正式な裁判で争うことになりますが、仮に正当防衛と判断されなかった場合でも、懲役の長さや執行猶予となるか否かの判断において有利な事情となります。